以前ブログで、犬具の首輪・リード・胴輪などのテープ素材を折り返して部品を留める箇所を、ミシン縫いにした方が強度があるのか?それとも溶着留めにした方が強度があるのか?「ミシン縫い」vs「溶着留め」の戦いをブログに記述するとお伝えしておりました。今回、やっとテストをすることができましたので、ご報告させていただきます。


※こちらで使用する言葉の意味:
●ミシン縫いとは・・・ミシンを使ってテープ素材同士を縫い合わせる。その際ボックス縫いとクロス(X)縫いの組み合わせで縫い合わせる方法
●溶着とは・・・テープ素材同士を着ける面を熱で溶かし、張り合わせて両側から指で押さえて圧着する方法


テストは3種類のテープ素材で行いました。初めは一番多く使われている素材の15mm幅のテープ素材を2種類テストしました。15mm幅は体重5kgまでの超小型犬と体重10kgまで小型犬を対象としております。15mm幅の場合、最低必要強度は70kgとなります(体重10kg x 7倍 ※ペット用品工業会の規定では5倍ですが、私が安全だと感じる最低必要倍率の7倍で計算しています)。つまり、引っ張り強度試験器によるピーク時の数値が70kg以上で合格となります。

テストは、いずれもテープ素材の先端を折り返し(リードの持ち手を作るように)わっかを作ります。そして、テープ素材同士を合わせる部分を3cmぐらいとってミシン縫いもしくは溶着で着けます。現状の犬具は(サイズにもよりますが)素材の折り返しは、だいたい3cmぐらいですので、それに準じた長さで着けています。


犬具ミシン縫いvs溶着犬具ミシン縫いvs溶着

ミシン縫いはコンピューターミシンによるボックス縫いとクロス縫いの組み合わせです。素材をセットすると瞬時に左の写真のように縫ってしまう優れたミシンを使用しています。

ちなみにミシンは工業用ミシンでは有名なJUKI社製を使用しています。工業用のコンピューターミシンになるとさすがに?百万円と高価なものとなります。家庭用のミシンではこの厚みでこれはできないこともないですが、自動でできるミシンは見たことがありません。


犬具ミシン縫いvs溶着犬具ミシン縫いvs溶着

そしてこちらが溶着です(右の写真)。 私が溶着しましたが、正直、ド下手です。職人ではないので、このレベルしかできません。実は、これが後ほどのテスト結果に現れてしまいますが、とりあえず。

引っ張り強度試験器は、以前のブログ「トップリングカラー耐久テスト」で使用したGOTECH社製の試験器を使用しています。

結果はこちら↓


犬具ミシン縫いvs溶着犬具ミシン縫いvs溶着

左の写真がミシン縫いの破断状態で、右の写真が溶着の破断した状態です。そして結果が以下の通りです。

①ミシン縫い:335.73kg / ②溶着:164.08kg
※印刷されたテスト結果は一番下に表示しています。

コレを見て一目瞭然、溶着って弱えーってなりますよね。実はコレが私の職人技にも満たない技術でやってしまった結果なんです。つまり、溶着をする人の腕により大きく左右されます。これは建具の溶接も同じです。熟練さんでしたらしっかり着けることができますが、未熟者ですと、このような結果となります。これがミシン縫いですと、ボタン一つで縫えるので、人の技術力には左右されません。

と言いつつも、よくご覧下さい。ミシン縫いの335kgは脅威の数値ですが、溶着の164kgも大した数値だと言えます。つまりこの15mm幅のテープ素材は最低でも70kgの強度が必要なんですが、溶着はその2.3倍の164kgです。これはこれで15mm幅の犬具としては合格値をはるかに超えています。しかし、ミシン縫いと比べると、残念な結果にはなっていますが。


犬具ミシン縫いvs溶着犬具ミシン縫いvs溶着

次に15mm幅でも別のテープ素材を使って、片方はミシン縫い、もう片方は溶着にして、引張りっ子してもらいました。そのため、どちらかが破断すると、その時点で試験器が停止します。その時のピーク時を計ってみました。

結果はこちら↓


犬具ミシン縫いvs溶着

ここでもミシン縫いが勝利しました。結果は以下の通りです↓

③231.50kg ※溶着が破断した時点で得られた数値です。

どうでしょうか?初めの15mm幅は溶着不良で結果があまり良くありませんでしたので、今回は溶着をしっかり着けました。その結果が同じ15mm幅でも231kgまで耐えることができました。やはり溶着具合によって結果が大きく変わってしまうので、すこし不安を感じますが、231kgの数値には大変満足しています。しかし、ご覧の通り、ミシン縫いには負けましたが・・・。ミシン縫いは安定した強度があることが見て取れます。


最後は、19mm幅の素材もテストしてみました。19mm幅のテープ素材は、体重20kgまでの中型犬向けです。そのため、最低でも140kg(体重20kg x 7倍)の強度が必要となります。結果はいかに・・・↓

犬具ミシン縫いvs溶着犬具ミシン縫いvs溶着犬具ミシン縫いvs溶着
犬具ミシン縫いvs溶着犬具ミシン縫いvs溶着犬具ミシン縫いvs溶着

上2段の写真をご覧下さい。上段がミシン縫いで下段が溶着です。そして、真ん中が破断する前の側面の写真。一番右がそれぞれ破断した状態の写真です。そして結果は以下の通りです。

④ミシン縫い:369.23kg / ⑤溶着:347.81kg

ここまでくると慣れてきたせいか?上手に溶着できるようになってきました。僅差ではありますが、またもやミシン縫いの勝利です。結果3戦3勝でミシン縫いが圧勝でした。しかし溶着もよく健闘いたしました。19mm幅にいたっては347kgもありましたから、耐久性には全く問題ないですね。ただ、ここで色々と判ってきたことがあります。それは以下の総評をご覧下さい。


犬具ミシン縫いvs溶着

左は引っ張り強度試験器でプリントアウトしたものです。上記の記述順に数値が表記されております。Peakが破断した時の数値を表しています。

【総評】
以前のブログでも昨今の犬具は、ほぼすべてミシン縫いに移行し、以前は溶着主流だと記述しました。個人的には今でも溶着がミシン縫いより強いと信じていましたが、結果を見て愕然としました。圧倒的にミシン縫いが強い結果に終わってしまいました。やはりミシン縫いに移行するはずだと実感した次第です。

溶着は、先に述べました通り、職人さんのレベルによって左右されます。それに、溶着する生地の固さや素材の種類にも左右されます。また、素材が違うもの同士では溶着できないというデメリットもあります。例えばナイロンとポリプロピレンでは溶着できません。物質同士が反発しあうようです。その点ミシン縫いは、素材違いなど全く問題ありません。どのような素材同士でも縫い合わせることができます。しかも、これだけ強度があると、ミシン縫い以外の着け方など考えられません。ただ、ミシン縫いにも欠点があります。それは、何かに引っ掛かって糸が切れてしまうと、ほどけてしまう可能性があります。ただこれは、コンピューターミシンではめったに起こったことがありません。それだけ、コンピューターミシンは強度や耐久性も安定しているということが言えるでしょう。

テストは、いずれもミシン縫いと溶着それぞれ単体で引っ張った結果です。つまり、通常の首輪やリードなどは、ミシン縫いが複数箇所あるので、単体で引っ張られることがなく、縫いあわせた箇所や素材そのものが破断することはめったにありません。代わりにここまで引っ張ると部品(バックルやスナップなど)の方が先に破断する可能性があります。(※首輪の強度に関しては「トップリングカラーの耐久テスト」をご覧下さい)

溶着は今でも一部の犬具に使われています。ミシン縫いが不可能な箇所に溶着が用いられますが、上記の通り強度には全く問題ありません。ただ、コンピューターミシンの出現により、時代が溶着からミシンへと移行したことをつくづく実感いたしました。それも単一な素材だけで作る犬具ではなくなってきたことも影響してます。ナイロンやポリプロピレンはもちろん、リボンなどのポリエステルやデニムにニットなども犬具に使われるようになりました。デザインの多様性もコンピューターミシンを必要とする時代になったように感じます。



link:トップリングカラーの耐久テスト : 引張り強度試験器【動画】
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